1. HOME
  2. 特集
  3. Vectorworksで行うBIM設計の現在と未来

特集

special

Vectorworksで行うBIM設計の現在と未来

Vectorworksで行うBIM設計の現在

Vectorworksは元々2DのCADが、3D機能そしてBIM機能を追加する形で進化してきた汎用CADです。そのため、3DBIMが出来るCADには珍しく2D機能が非常に充実しています。そのシェアは業界3位と言われています。ところがBIMだけに限るとVectorworksでBIMを行なっている人は大きく減ってしまいます。ではVectorworksでBIMは十分に出来ないのでしょうか?

意外と機能的な差はない

この点は、弊社がBIMライブラリ技術研究組合(BLCJ)の事業で、鉄骨4階建ての共通モデルをRevitやArchicadと共にVectorwirksでも3Dモデル化と図面化した中で、遜色がないことが分かっています。特に2Dの作画や敷地のモデリング、データの集計を行う表計算機能についてはVectorworksのアドバンテージになっています。

BIMは独自で習得できるようなレベルを越してしまっている

では一体何がVectorworksのBIM活用の足枷になっているのでしょうか。その一つが、使いやすい実務的なテンプレートや十分なリソースが殆ど無かったこと、またそれを使いこなすための十分な習得機会がなかったことです。残念ながら、BIM習得を独自で行うのは、よほどマニアックか、専門の担当部署を作らない限り、不可能に近いというのがこの3年お教えして来て感じていることです。

自由さが業務を圧迫する

Vectorworksはこれまでその多機能さ、使い方の自由さから設計者それぞれがカスタマイズして使ってきた歴史があります。それは素晴らしいことだとは思うのですが、この考えのままBIMを行おうとすると必ずいくつもの壁に突き当たることになります。BIM設計は様々なツールや情報が網の目のように組み合わさるため、何かを独自のカスタマイズをしてしまうとほかでも同じような修正が発生することになり、その調整手間が業務を圧迫してしまいます。このようなこともVectorworksでのBIM普及を遅らせたと考えられます。

自由のための標準化

では設計の自由ささえ確保できればVectorworksの道具としての自由度を捨てて良いのか?それはノーです。古来、人は道具を使いやすいようにカスタマイズして来ました。多分CADも同じである程度はそこの設計手法に馴染むようなカスタマイズは必要です。私が考えるVectorworksらしいBIM設計とは設計の自由度を妨げない基本的なところは標準化し、その上にオプションとしてカスタマイズ可能な様々な機能や要素が組み込まれるユニット型プラットフォームのような形が向いているのだろうと思います。

BIM導入を終えた人の8割弱が満足している

フローワークスが国の補助金事業の一環として実施したアンケートではBIMを採り入れた設計者の8割近くが満足していると答えています。この事実を見ると、BIM導入の効果は大きいのは間違いないと考えられます。

Vectorworksで行うBIM設計の未来

では、Vectorworksで行うBIM設計の未来はどうでしょうか?

今後もBIMに注力

Vectorworks社は今後もBIMに注力することを公言しています。実際Vectorworksは毎年BIM機能が強化されています。また、先日も日本製プラグインである木造BIMツールがプレカットや構造計算ソフトにデータを受渡できる中間ファイルへの書き出しをサポートしました。2022からはBIM機能だけでなくプレゼンテーション機能、情報処理機能も強化されることが発表されています。ソフト自体の進化はしばらくはかなりの勢いで進んでいきそうです。

特殊な形の普及の可能性

BIM活用の度合いはどうか。BIM導入後の満足度がある程度高いことを考えると、あるところでBIMが一気に普及することになると考えられます。ただしその形は少し特殊で、2DBIM、もしくは2.5DBIMというようなBIM機能の一部を取り入れたようなものも多くの割合を占めるというのが私の予想です。これは設計側の理由もありますが、現場や外注先の対応が遅れ気味なこと大きな要因です。それでもBIM化さえされていれば最終的な形への移行はスムーズに進める事が可能だと思います。

BIMネイティブという世代の出現

これからBIMネイティブと言われる世代が出現してきます。BIMでしか設計したことしかないという新しい世代です。彼らは当たり前のように立体で思考し、立体で設計を進めていきます。そのような世代はBIM設計の利点を余すことなく享受して設計を行っていくことになります。手書きがCADに変わった時のように、BIM設計が主流になるのが案外早く訪れるのかもしれません。

これは設計の更なる質向上につながると考えますし、BIMが目指す設計施工メンテナンスまでのシームレスなデータ共有による建物の価値向上にも繋がっていきます。俗にいうデジタルツインも当たり前になります。

Vectorworksで行うBIM設計の未来はどんどん便利で価値の高いものになっていくことはもはや間違いないです。建物ボリュームのデザインエスキスから設計そして現場、アフターフォローまで一環したBIM設計環境をVectorworksはその汎用性を活かしこれからもワンストップで提供していくと考えられます。